過疎地 広域で助け合い

耶馬渓の樋山路集落を「T型点検」



 「農山村の独居や高齢夫婦世帯が心配だ」―。県内でも農山村の人口流出は、もはや社会問題とされる。熊本大学名誉教授でトクノスクール・農村研究所の徳野貞雄さんの提唱するT型集落点検が9月29、30の両日、中津市耶馬渓町樋山路地区で実施された。車で30分程度の近隣にいる子どもたちが買い物や病院に連れて行くなどして暮らしを支え、予想以上に安定していることが分かった。
 樋山路集落で「T型集落点検」なるものを行った。過疎地の農山村集落において、実家の親と他出子・者(マチに出ていった子どもたち)との分布や関係を明らかにする調査である。
 驚くべきことが判明した。行政データである住民台帳では、樋山路は高齢者を中心とする在村者154人の過疎地の限界集落といわれていた。しかし、調査で判明したことは、流出した子どもたちの多くは近場に暮らしている。中津市内や日田や豊前といった近距離の他出子・者がなんと172人もおり、さらに北九州市や大分市などの中距離の他出子・者が85人もいた。すなわち、「子どもたちは近場で暮らし、世帯は離れていても相互に連絡を取り合い、『世帯連合』として日々助け合っている家族の現在の姿」が浮かび上がってきた。
 ◆ ◆ ◆ 
 今まで常識だと思われていた通念が、見方や分析方法を変えれば全く異なった姿に見えることがある。すなわち、そこに住んでいる人たちだけで分析すると、過疎地の集落の多くは限界集落になる。しかし、子どもたちの居場所と暮らしの連携を加えて分析すると、多くの集落は、「修正拡大家族」をベースとした「世帯連合」的な家族を形成している。すなわち、祖父母・父母・子どもの世帯が分裂し、世帯としてバラバラに住んでいるが、携帯電話と車を駆使して日々連絡を取り合って家族として暮らしている。昔のように、家族が同じ場所、同じ一つの家で暮らしているのではない。このように見方や考え方の基準を固定化せず疑って、新しい基準から考えてみると現実の地域の姿が見えてくる。
 現代の過疎農山村の生活居住空間は、耶馬渓町に限らず日本全国で「三層構造」を形成している。まず、実家のある農山村に高齢者を軸とする在村住民が25%住み、車で30~40分の中距離のマチに子どもたちが、近距離他出子・者として35%居住している。また、車で1時間半程度の県庁所在地に、中距離他出子・者として若い人たちが25%近く暮らしている。以上、過疎地の人々の居住空間は、意外と安定的な三層構造の生活空間を形成している。この空間が、現代の生活空間であり、行政の既存の枠組みとは大きく異なっている。
(トクノスクール・農村研究所、徳野貞雄)

生活構造の実像浮かぶ
 最初に調査したのが黒法師、貞曽集落。点検を前に、徳野さんは「人口が減ったというが、日本全体でピークから300万人しか減っていない。明治維新当時は3300万人だった」と説明。「減ったのは世帯の人数です」と続けた。
 徳野さんの教え子らが調査員となり、模造紙を広げた。組ごとの5、6世帯でテーブルを囲んだ。「おばあちゃんちの子どもさんは何人?」「お孫さんはどこにいるの?」「中津の娘が週に2、3日は来ているよ」「長男を頼りたいが…、仕事が忙しく、なかなか帰ってこられない」と聞き取りが進む。
 調査に参加できない家もあったが、隣近所の人が子どもがどこにいるかを教えてくれた。「この調査は都会ではまず無理。世帯ではなく、家族をみることが大事です」と徳野さん。
 2日目は、中組と両畑を調査した。この後、徳野さんは集落ごとに分析し、近、中距離に住む他出子・者の役割や活用を考える。集落の行く末を心配する声を受け、調査を世話した地元の中島信男さん(66)は「この調査、その後の一手でどう化学反応が起きるのか、楽しみです」と話した。
2018年10月11日

探(SAGURU)おおいた

大分の話題を深掘りして、さまざまな現状に迫るルポルタージュです。 木曜夕刊1面に掲載。 日ごろ表に出ることの少ない社会の裏側や弱者、困っている人、記者が疑問も思うことなどに密着取材して、現場から伝えます。

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