由布院を見つめ直す 外国人観光客急増、大型開発も浮上

 由布市湯布院町の由布院温泉で外国人観光客が急増している。にぎわいを見せる温泉街には旅館や飲食店の進出計画が相次ぎ、外部資本も流れ込む。大型開発と一線を画したまちづくりで全国ブランドに成長した由布院温泉は変わっていくのか。今を探った。
 ガラガラと大きなキャリーケースを引く音が響く―。平日にもかかわらず、JR由布院駅から土産物店が立ち並ぶ湯の坪街道に向かって絶え間なく人々が歩いていく。楽しげな声に耳を澄ますと、聞こえてくるのは韓国語、中国語、英語。日本人観光客はまばらだ。
 同市の観光動態調査によると、日帰り客数は2012年から微増傾向。16年は熊本・大分地震で大幅減となったが、17年は持ち直した。回復を支えたのが外国人の増加。海外向けのPRなどが功を奏し、16年の17万1千人から35万6千人に急激に伸びた。
 ◆ ◆ ◆
 にぎわいを見せる温泉街に、全国展開する飲食店や旅館の進出計画が持ち上がる。官民協同の市まちづくり観光局は「国内の景気回復に伴い、将来性が見込める投資先として選ばれている。数十年間、買い手がなかった土地まで売却話が持ち上がっている」と指摘。国交省の公示地価によると、由布院駅前の商業地は16年に県内トップの変動率を記録。17、18両年も伸びた。
 「一過性で終わる第2のバブルではないか」。現状を危惧する観光関係者らの表情は深刻だ。湯の坪街道で買い物をしていた韓国人チェ・ソンジンさん(31)は「SNS(会員制交流サイト)は由布院温泉の情報であふれている。ここに来たことは自慢になる」。韓国での過熱ぶりを説明した。
 17年は外国人宿泊者も16年比で約1・9倍。価格帯の低い旅館を経営する60代の男性は「客の7割が外国人。国がインバウンド施策を減らしたり、アジア圏でのブームが終わったら立ちゆかなくなる」と胸の内を明かす。
 旅館経営者で由布院温泉観光協会理事の鶴野和明さん(59)は温泉街の安定した発展には、国内からの誘客が最重要だと考える。「そこが伸びないのは、本来の魅力を地元関係者で共有し、日本の観光客に伝えることができていなかったからだ」
 ◆ ◆ ◆
 バブル期の1990年、旧湯布院町は乱開発に歯止めをかけるため、「潤いのある町づくり条例」を制定。町の成長を管理する“憲法”として合併後も引き継がれてきた。だが、バブル崩壊や地域外業者の参入などで環境が変化。理念を共有する意識は薄まっていった。
 大きな爪痕を残した熊本・大分地震(16年4月)や外国人観光客の急増を機に、「もう一度、由布院温泉を見つめ直そう」という動きが始まっている。同観光協会と同旅館組合は今年3月、理念や目指すべき姿を示す独自の観光基本計画を初めて全面改定した。
 計画では自然や農村の景観を最大の観光資源とし、こぢんまりとした温泉保養地を目指すことを改めて確認。法的拘束力はないが、「宿泊施設の規模は平均15室程度(最大30室)」と明示した。
 温泉街から少し離れた高台では、有名温泉旅館の進出に伴う大型開発計画が浮上。市長の諮問機関は7月末、地域の理念にそぐわないとして規模の見直しを求める答申を提出。相馬尊重市長も9月26日、「大型開発は決して好ましくない」とする通知を開発業者に出した。
 計画地は都市計画の無指定地域で造成面積の制限がない。市は制限区域を見直すための調査費を本年度一般会計補正予算に計上。外部資本のさらなる流入を見据え、行政側の対策も進みつつある。
 ◆ ◆ ◆
 国交省交通政策審議会観光分科会の委員を務める矢ケ崎紀子東洋大学国際観光学部教授(55)は「将来像を責任を持って描いていけるのは、地元関係者だけだ」と指摘。その上で「日本人、外国人にかかわらず、理念に共感してくれるリピーターを大切にする観光地が生き残るだろう」と話す。
 新たな観光基本計画の概要説明会には約60施設が参加した。桑野和泉観光協会長(54)は「今後への不安もあるが、何とかしていこうという関係者の前向きな意識を感じた」。築いてきたブランド価値を守りながら国際化時代を生き抜こうと、温泉街が団結し始めている。

インバウンド優等生 大分県
 観光庁の2017年観光統計によると、全国の外国人延べ宿泊客数は7969万人(前年比14・8%増)で過去最高を記録した。大分県は138万6930人で、増加率は全国1位(同67・7%増)となった。
 総数では大都市圏や北海道、沖縄県などに次ぐ12位。▽14年 40万人▽15年 77万人▽16年 83万人|と順調に伸び、「インバウンドの優等生」とされている。
 県観光・地域振興課は、JRグループの大型観光キャンペーン(15年)や熊本・大分地震の支援策で外国人向けにも発行した旅行クーポン「九州ふっこう割」(16年)などで、初めて来県した人が増加したと分析。17年はリピーターや口コミでの来訪が増えたとみている。
 推移は好調だが、来県外国人の93%がアジア圏で、富裕層の多い欧米豪圏はわずか2%にとどまる。県は近隣国中心だった情報発信施策の見直しを検討。同課は「同じ地域に依存しすぎている。幅広い国から呼び込みたい」としている。
2018年9月27日

探(SAGURU)おおいた

大分の話題を深掘りして、さまざまな現状に迫るルポルタージュです。 木曜夕刊1面に掲載。 日ごろ表に出ることの少ない社会の裏側や弱者、困っている人、記者が疑問も思うことなどに密着取材して、現場から伝えます。

OPENCLOSE

速報ニュース

ニュースアクセスランキング 20時31分集計

ランキング一覧を見る

大分合同新聞ニュース絞り込み検索
記事の絞り込み検索が可能になりました!

期間選択
ジャンル選択
記事種別選択

大分県の天気

PM2.5情報
大分県の測定データ大分市の測定データ
大分合同福祉事業団
インターネットによる募金「かぼす募金」を受け付けています
ぶんぶん写真館
記者やカメラマンが撮影した写真を閲覧・購入できます。
大分合同新聞
販売店検索はこちら
お近くの販売店を今すぐ検索!
HELLO KITTY×大分合同新聞
おともだちカード
「大分合同新聞 HELLO KITTY」が大切なあなたの気持ちをお届けします。

全てのお知らせを見る

電子書籍のご案内

ページ上部へ戻る