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語り継ぐ豪雨の記憶 「奇跡のカフェ」の石井さん

福岡・大分豪雨2年(上)

 軒先にぶら下げたタマネギの向こうに、大きくえぐれたままの山肌が見える。
 6月16日。日田市小野地区の古民家カフェ「谷のくまちゃん家(げ)」を切り盛りする石井幹夫さん(69)は、窓の外に広がる土砂崩れ現場を見つめる客に「すごい景色でしょう」と話し掛けた。

 美しい棚田とホタルに魅せられ、11年前に福岡県那珂川市から移り住んだ。2012年の大分県豪雨で被災した地区を盛り上げようと、住民グループ「すずれ元気村」を結成。活動拠点となるカフェの準備を進めていたが、開店2日前の17年7月5日、再び豪雨に見舞われた。
 自宅は崩れた土砂が直撃して全壊したものの、近くのカフェは窓ガラス1枚しか割れずに済んだ。「やるしかない」。約6キロ離れたみなし仮設の市営住宅に妻(68)と身を寄せながら、仲間と協力して約9カ月後にオープンにこぎ着けた。
 被災を乗り越えた「奇跡のカフェ」と呼ばれ、個人客や団体客が応援のため来店してくれるようになった。

 求められれば、客に自らの被災体験を語ってきた。
 「山から変な臭いがしていたんです。その後、大規模な土砂崩れが起きて、自宅が壊れて…」
 「災害から1年後の盆、帰省してきた子どもたちを見送った後、妻が突然泣きだした。みなし仮設の暮らしも限界だったんです」
 あの日の恐怖や、先行きが見えない仮住まいの不安を包み隠さず打ち明けた。
 話していると、つかの間だが無心になることができた。
 「気持ちを吐き出すことでストレスが和らいだ」

 間もなく2年がたつ。
 小野地区では、自力再建が難しい被災者向けの「災害公営住宅」を整備する計画が立ち消えになった。「希望者数が固まらない」(日田市)のが理由だった。
 入居を希望していた石井さんは迷った結果、5月、市営住宅の近くに新居を構えた。毎日、車で約10分の小野まで通っている。
 店の前の県道を行き交う復旧工事のトラックを、石井さんは静かに眺めた。
 「どこにでも災害のリスクがある。あの日の記憶を語り継ぎ、みんなが未来のために備えてくれたら」
※この記事は、7月2日大分合同新聞朝刊23ページに掲載されています。
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