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退職後 ヨーロッパ巡る旅に 画家、江藤哲の生涯㊦

 1968年春、特許庁を58歳で退職した江藤哲は、その年の夏にヨーロッパを巡る旅に出た。各地でデッサンを続けるが、特にフランス南部やスペインの輝くような景観には深い感銘を受けたようだった。以後の作品には、光と大気の効果を意識した風景や静物が、鮮やかな色彩と伸びやかなタッチの中に写し出されていく。
 そもそも江藤が画家として歩き始めた昭和初期は、佐伯祐三や里見勝蔵、前田寛治らが、パリ仕込みの主観表現を基調にそれぞれ個性的な作風を示し、大いに画壇の注目を集めた時期である。若い江藤もそうした潮流の中で、色と形が調和した「強い絵」を求めて制作しようとするのだが、いたずらに鮮やかな強い色を使うと、画面の統一感が壊れてしまうのが悩みの種だった。退職後の渡欧は、そうした課題を打開するための一つの糸口を与えてくれたのである。
 その後、タッチを生かした流麗な色彩表現は、着実にその評価を高めていった。それとともに、パステルによるデッサンも注目されることになった。というのも、江藤の作品制作には彼なりの「流儀」があって、まず黒のパステルで油絵と同サイズの下絵デッサンを描き、形や全体の調子を見定めてから油彩の制作に取り掛かるのである。
 油彩作品は100号クラスの大きさのものが多いから、基本的にはそれと同寸大の巨大なデッサンが描かれることになる。ただこれらは、単なる「下絵デッサン」では片付けられない魅力がある。表現力に富む筆致が生み出す美しい濃淡や階調には、高い精神性をたたえた水墨画の雰囲気が漂う。このデッサンのファンも数多くおり、油彩画に劣らぬ人気を博していたのである。
 退職してからの江藤は、約20年間にわたって銀座の画廊を会場に油彩画とデッサンによる個展を隔年交互に開催し、自作を世に問い続けた。それは、画家としての時間を取り戻すための、自らに課した過酷なノルマのようにも思われる。
 91年9月、江藤は5度目のパリ制作旅行からの帰国直後に、絵画指導のために訪れた鹿児島市で急逝した。82年間の生涯を通じて描いた作品は、油彩画約1万点、デッサンは7千点に上ったという。(県立美術館副館長 加藤康彦)
 ▽「明治150年国東の偉人展 画家・江藤哲展」は国東市歴史体験学習館で作品20点を展示。国見ふるさと展示館では15点を展示している。両会場とも、来年2月3日まで(有料)。
※この記事は、12月22日大分合同新聞朝刊19ページに掲載されています。
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