「サッカーコラム」イニエスタが教える指導の大切さ

緻密さが不足している日本人選手



 マレーシアの首都クアラルンプールで開催されていたU―16(16歳以下)アジア選手権で日本代表が6大会ぶり3度目の優勝を飾った。アンダーカテゴリーの大会は注目度が低いが、日本サッカーの将来を考えれば、とても価値が高い。

 決勝の相手はタジキスタン。ハイライト映像でしか見ていないが、ともにチャンスとピンチがあり、結果がどちらに転んでもおかしくない試合だった。そしてこのような互角の内容を勝ち切るというのは、間違いなく自信になる。押し込まれても勝ち切るという勝負強さが、想像以上の精神的なタフネスさとなって備わるからだ。

 1―0と拮抗(きっこう)した試合で決勝点を呼び込んだのは、サッカーで最も点になりやすい「普遍の形」からだった。左サイドの中野瑠馬がゴールライン付近まで切れ込んでマイナス方向にクロスを放つ。それをファーサイドに入り込んで待ち受けた西川潤が、左足で合わせてゴールにねじ込んだ。相対するDFを見事な切り返しで置き去りにした中野、不規則なバウンドの浮き球を落ち着いてボレーで合わせた西川と、見事な技術だったと思う。

 森山佳郎監督が率いるこのチームは、南米のペルーで来年開催されるU―17ワールドカップ(W杯)の出場権を得た。世界の様々なスタイルを持つ国とこの年代から対戦し、競争力を身に付ける機会は貴重だ。10年後にA代表としてW杯で戦うためには、これからさまざまなことを学んでいかなければいけないだろう。

 Jリーグ発足した25年前と比べてれば、選手たちの技術は格段に向上した。特に自分がボールを保持しているときのボールの運び方などは、目覚ましい進歩を見せている。それはジーコやリトバルスキーを始めとする、年齢的こそピークを過ぎているものの世界でもトップクラスの技術を持っている、いわば「生きた見本」を目の前で体感できる機会が増えたからだ。

 その後、ドゥンガやジョルジーニョ、レオナルド、ストイコビッチという、日本を拠点にW杯の予選や本大会に参加する現役代表選手が数多くJクラブに加入した。このことも、大きな刺激となった。加えて、優勝な外国人指導者が、各国の技術や戦術、サッカー観を植え付けてくれたことも日本が6大会連続でW杯本大会に出場する原動力となった。

 しかし、個人的にはこのままでいいのかなという疑問が最近、頭をよぎるになった。それは、ロシアW杯でベルギーに敗れたからだろう。人間は欲深いものだ。Jリーグ発足以前は、W杯に出られればと考えていた。アジアを勝ち抜くようになると、W杯で決勝トーナメントに進出できればと思うようになった。そして、その欲は現在では決勝トーナメントで勝つにはと変化している。

 サッカーではよく「個性を大切に」といわれる。それでも選手が成長する過程においては、指導者のもっと細部についての具体的な助言が必要なのではないだろうか。そう思うようになったのは、イニエスタのプレーを目にする機会が多くなってからだ。

 もちろんイニエスタは、技術的にこの地球上でも数人の選手しか持っていないものを身に付けている。それを「天賦の才」といってしまえばそれまでだが、同じバルセロナの下部組織である「カンテラ」で育った17歳の久保建英のプレーを見ていても、多分に共通するものがある。トラップから次のプレーに移る際に“つなぎ目”がないのだ。

 日本人選手の多くは、トラップとその次のプレーがそれぞれ独立している。しかし、イニエスタや久保はトラップから次のプレーが流れるようにつながる。彼らにとっては、トラップと次の選択肢込みで一つのプレーなのだ。彼らから見れば常識であろう、この視点は幼少時から受けてきた指導によって培われたに違いない。

 J2松本の反町康治監督はよく選手を評するときに「止める」「蹴る」という言葉を口にする。サッカーを構成する最も重要な二つの要素について、日本の指導者は無頓着なのではないか。普段の練習から、もっと要求を高めれば底辺のレベルは間違いなく上がるはずだ。 

 日本のサッカー界は、海外の良い情報を積極的に取り入れていると思われがちだ。ところが見落としも多い。2001年3月24日、トルシエ監督に率いられ日本代表はパリ郊外の雨のサンドニでフランス代表と対戦し、0―5の大敗を喫した。

 ショックのなか、フランスの強さを探ることとなった。そこで日本人が初めて知ったのは「体の向き」だった。ボールがある位置に対して各選手が体を向けるかを幼少時から緻密に教え込まれたフランスの選手たちは、ボールに対しての反応が日本人選手よりもコンマ何秒早いということが分かったのだ。その意味で緻密さを求めれば項目はいくらでもある。問題は、指導者がそれに気づくかだ。

 今週末から来週にかけて森保一監督率いる新生日本代表が、パナマ、そしてウルグアイと対戦する。このチームに4年をかけて、末端まで神経が生き届く緻密な選手が増えていかなければ、W杯での上位進出はない。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はロシア大会で7大会目。

2018年10月11日

サッカーコラム

サッカージャーナリスト・岩崎龍一氏による詳細な分析です。

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